理工学部 電子情報学科 実習助手
小島肇
行先: | NETWORLD+INTEROP 97 TOKYO |
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場所: | 幕張メッセ |
期間: | 1997.06.04(水) 〜 1997.06.05(木) |
NETWORLD+INTEROP 97 TOKYO で目を引いた「目玉」技術を以下に述べる:
ギガビット Ethernet は、 これまでの 10Mbps (10BASE-x), 100Mbps (100BASE-x) よりも高速な 1000Mbps (1Gbps) の伝送速度を持つ Ethernet (1000BASE-x) である。 光ファイバーを用いたものと銅線を用いたものが検討されているが、 今回各社が製品を展示していたものは、光ファイバーを用いたもの (1000BASE-SX) である。
ギガビット Ethernet は、主に幹線ネットワークおよび中央サーバ群を 接続するために用いるものである。このクラスの通信速度は、これまで HIPPI など特殊な (= 高価で一般に普及していない) 装置でしか実現 できなかったが、ギガビット Ethernet の場合は、今後急速に一般化し 安価になっていくと考えられる。
標準規格がまだ完成されていない (制定作業中) こと、 また製品が出始めたばかりである ことから、現状ではギガビット Ethernet 対応装置間の 相互運用はほとんど不可能である。マルチベンダー環境 での相互運用を行えるのは 98 年以降になるだろう。
ギガビット Ethernet は物理層の高速化であるが、 それより上位のネットワーク層での高速化を行う製品が 「レイヤー 3 スイッチ」である。
レイヤー 3 スイッチは、スイッチ技術を用いて ルータを高速化する技術である。従来ソフトウェアで行っていた ルーティング処理の一部 (あるいはすべて) をハードウェアで 行うようにし、高速なルーティングを行う。 各種スイッチ技術や上記ギガビット Ethernet など、高速な ネットワークを順次導入すると、 どうしてもルータがボトルネックとなりがちであるが、 これを補完する製品であるといえる。
ギガビット Ethernet と異なり、 レイヤー 3 スイッチでは標準規格化作業が進展していない。 各社仕様がバラバラなまま製品化を行っており、 相互運用が全く不可能な状態である。 数年は仕様の乱立が続くと考えられ、 導入する場合はメーカを統一する必要がある。
xDSL は既存の電話線を用いて高速なデータ伝送を行う技術である。 既存の技術が最大 50Kbps 程度であるのに比べ、xDSL では 数 Mbps の伝送速度を実現できる。
xDSL 技術には変調方式の違いによりいくつかの種類があるが、 最も注目を集めているのは ADSL と呼ばれるものである。 ADSL 製品は旧来のアナログモデムあるいは ISDN 装置を 置きかえるもので、その潜在市場はきわめて大きい。
N+I では、いくつかのメーカから ADSL モデムが出品されていた。 現状では NTT 回線には接続できないため、学内利用しかできない。 これが外部接続に利用できるようになると、 Internet 接続をきわめて安価に高速化できるようになる。 年末には NTT での ADSL サービスが開始されるとの噂もあり、 今後もその動向は要注目である。
ADSL モデムに関しては NetOneSystems 社より 評価版を貸しだしてもらえる よう交渉してきた。現在、よい評価対象ネットワークを物色中である。
Ethernet スイッチや ATM スイッチ/ルータはすでに安定した技術と なっており、価格も安価になっている。 特に Ethernet スイッチはたいへん安価になってきている。
「目玉」以外で注目したことがらを以下に述べる:
各社とも SOHO (Small Office, Home Office) 向けの小型で安価な製品を展示しており、 「どこでも LAN」時代の到来を 感じさせた。
上記 SOHO ともつながるが、Web サーバを組み込み、 簡単に Internet/Intranet での情報発信を行えるようにした 機械が登場しはじめた。 たとえばアクシスコミュニケーションズ の NetEye 200 は、Web サーバ + ネットワークカードつきカメラである。 これまでの「PC を買ってきてネットワークカードをインストールし、 Web サーバソフトをインストールし、 カメラなど各種機械を接続し、 調整し……」という手間を考えれば、 BOOTP 設定 + 電源 ON で ok というのは たいへん手軽で便利である。
また CISCO の Micro Webserver は SOHO 向け簡易 Web サーバ機で あるが、「Web サーバ + SCSI インターフェイス + ネットワークカードつき Zip ドライブ (!!)」とみなすこともできる。 この製品の場合、 Web サーバ機能をマイクロカーネル化して 組み込んであるため、通常の Web サーバが持つ「プラットホーム OS の セキュリティホールのために侵入される危険性」がない。 これは SOHO 向けとして評価できるポイントである。
CISCO Micro Webserver に関しては、 「UNIX USER」誌 1997 年 7 月号に詳細な解説記事がある。
ファイアウォールや認証システムは、すでに淘汰の時代に 突入しており、これといった新規製品はみうけられない。 逆に言えば、今市場に残っている製品は、 それなりによくできたものであると言えよう。
今回、RINS での One-Time Password 利用を検討するため、 One-Time Password 製品を重点的に調査した。
One-Time Password 製品は大きくわけて
いくつかのメーカでは 通常のファイアウォールに加えて「セキュリティ監査」 製品を展示していた。 セキュリティ監査製品は、 すでに知られている攻撃手法を各自のファイアウォール に対して実行し、ファイアウォールが攻撃に対して 防御できているか否かを 調査・報告するものである。 ファイアウォールは、たいへん慎重な設定・運用を 必要とするシステムであり、 設定ミスが致命的な被害をもたらす可能性がある。 そのため、監査を行って設定の妥当性を検証しようというのがねらいである。
製品を買わなくても、各社とも「監査サービス」を行っているので、 スポット的に監査することも可能である。
セキュリティ製品で目にとまったのは東芝の 「ネットワーククリプトゲート (NGC)」と 「モバイルコンピュータゲートウェイ」(参考出品) である。 ノート PC のトップメーカらしく、 どちらもモバイルコンピューティングでのセキュリティを向上させる 製品である。
NGC では、モバイルコンピュータが任意の場所に移動しても
猛威をふるっている“マクロウィルス”が後押ししているのか、 ワクチン企業 トレンドマイクロ のブースはいつも混みあっていた。トレンドマイクロは 企業向けのトータルソリューションを全面に押しだしており、 来場者も企業人が多かったように思う。
現状の RINS の環境では「ウィルス」に関してそれほど神経質になる 必要はない (個別対応にまかせる) と考えるが、業界の現状を絶えず 認識しておく必要はあると考える。
NetOneSystems 社からは、 NTP stratum 1 サーバの貸し出しもおこなってもらえることになった。 これについては RINS にて試用する予定である。
6/4 (木) 18:30〜21:00 に行われたスペシャルセッション SS1 「インターネット・セキュリティとJPCERT/CC」に参加した。
JPCERT/CC (Japan Computer Emergency Response Team / Coordination Center、 コンピュータ緊急対応センター) は、インターネットなどを経由して行われる 不正アクセス事件に対応するための中立的組織である。 不正アクセスにより被害を受けた当事者と、実対応組織である機器メーカー、 プロバイダーなど関係者間のコーディネーションを行う。
セッションにおいて興味深かったことがらを以下にしめす:
JPCERT/CC が中立組織でない限り、各組織における侵入情報などを 広く提供してもらうことは不可能である。そして、 JPCERT/CC が中立性を保つためには、財政的中立性の確保が 必須である。
現在 JPCERT/CC は通産省からの経済的支援を受けて運営されており、 財政的中立性を確保できていない。実際問題として、毎日新聞など いくつかのマスメディアは「通産省の外郭団体 JPCERT ……」と 誤解した報道を行っている。
財政的中立性を確保するために、 JPCERT/CC を会員性組織とすべく準備中である。 まだ公募できる段階ではないが、近々 (1, 2 か月以内) 公募体制を整えたい。
JPCERT/CC の会員公募が開始された時点で、龍谷大学としても 会員参加を行い、日本の Internet セキュリティに貢献する必要があると 考える。
その他、以下のような質疑応答が行われた。
現状では、人手不足で NT 関連の情報にまで手がまわらない。 将来的にはなんとかしたい。
NT 関連の情報となると Microsoft 社からの情報提供が 欠かせないが、Microsoft 社はかなりの情報をクローズにしているため、 むつかしい。
米国 CERT Advisory の知的所有権の問題をクリアにする必要がある ので、もうすこし時間がほしい。翻訳文書自体はすでにかなりの量が できている。
会員制を開始した場合に、 会員である/ないにかかわらず均質のサービスを提供するか、 あるいは会員にのみ何か特別なサービスを提供するかについては、 JPCERT/CC 内部でもコンセンサスがとれていない。みなさんの 意見がほしい。
これもコンセンサスはとれていないが、情報を遮断するような ことはしたくない。また、「おすみつき」を公平な形で 出すのは技術的にむつかしい。
真にクリティカルな情報であれば、JPCERT/CC の Web ページに PGP 公開鍵があるので、それを使って暗号化して送ってほしい。
ぜひ送ってほしい。