Last modified: Thu Mar 4 17:54:29 1999 +0900 (JST)
表記展示会に参加したので報告する。
当初目的として挙げていたのは以下の 2 点に関する情報の収集であった。
MacOS X Server について
Adobe Acrobat および PDF について
しかしながら、実際に参加してみると、 Adobe ブースには Acrobat のアの字もなく、 後者に関しては全く情報を入手することができなかった。 これは非常に残念であった。
よって、以下では MacOS X Server を中心に報告する。
新 G3 Mac 上で動作する MacOS X Server |
MacOS X Server については、一言で言えば「まだまだ未完成」であると言える。
例えば、大学の計算機教室用に導入する場合を考える。 認証サーバおよびファイルサーバとして MacOS X Server が動作する G3 Mac を各 1 台、 client として NetBoot する iMac を 50 台用意するとする。 これを 100BASE-TX のネットワークで接続する。 いまどきならこれらをスイッチング HUB などを介して接続すると思うが、 以下ではそのような詳細までは立ち入らない。
==+=========+==============================+===========+==== | | | | [認証] [ファイル] [client]....[client] G3 G3 iMac
ここで最も問題となるのは G3 ファイルサーバである。 MacOS X Server 自身には RAID 機能がないため、冗長性を手軽には確保できない。 このため、RAID を実現しようとするとする場合、次の 2 つが考えられる。
SCSI ボード付きの G3 Mac を購入し、外付け RAID 装置を接続する。
3rd パーティの SCSI ボードを接続し、その先に外付け RAID 装置を接続する。
3rd パーティの RAID コントローラを接続する。
ところが、どうやら「G3 標準」の SCSI ボードすら、MacOS X Server には対応していないらしい。「G3 標準」の SCSI ボードは Adaptec 社製だが、 デベロッパコーナーの Adaptec 社の人に話を聞いたところ、 MacOS X Server 対応については明言を避けていた。 まさか SCSI デバイスドライバが全く添付されていないとは思いたくないが、 MacOS X Server が実際に発売され、確認されるまでは予断を許さない。
ここまでは RAID について述べたが、 バックアップ用テープデバイスについても同様のことが言える。 少なくともサーバ用途を考えたとき、 「SCSI をレガシーと位置づける」Apple の決断は「あまりにも脳天気」と言わざるを得ない。 こと外部ストレージについては、SCSI はレガシーどころか最前線なのだ。 FireWire の構想が発表された当初とは、状況はあまりにも変ってしまっているのだ。
また、3rd パーティ品の SCSI 製品については、MacOS X Server 対応を明言したのはフォーカルポイントだけで、他の会社は明言を避けていた。 実は、3rd パーティ品の場合、MacOS X Server に対応したとしても別の問題がある。 MacOS X Server は Mach 2.5 ベースのカーネルを採用しているため、デバイスドライバの動的な導入ができない。 つまり、3rd パーティ製デバイスドライバを導入するためにはカーネルの再コンパイルが必要なのだ。 MacOS が目指す世界とは対極の位置にある「カーネルの再コンパイル」をふつうの Mac ユーザに要求できるのか? していいのか? という問題である。 今年中には登場する予定の MacOS X では、バイスドライバの動的な導入が可能な Mach 3.0 カーネルが利用され、MacOS X についても Mach 3.0 ベースのものが登場するのではないかと予想されている。 3rd パーティ品は、MacOS X の登場まで利用は難しいと考えた方がよいだろう。
ユーザ管理にも問題がある。 WindowsNT での多くの管理事例を見ても、たとえば「ユーザ管理は Excel で行い、 Excel データを管理 tool に流し込んで設定」というような要望は多いだろう。 ところが、BlueBox (MacOS 互換環境) 上に実装された MacOS X Server のユーザ管理 tool の import/export 機能は実に貧弱で、 たかだかユーザ名とグループ名しか扱えない。 パスワード等の付加情報はユーザ管理 tool でしか設定できないのだ。 これは困る。 これらの情報は全て Netinfo データベースに格納されるため、 Netinfo を生で扱えばなんでもできるようではある。しかし、 Netinfo は「ふつうの Mac ユーザ」どころか「ふつうの UNIX ユーザ」ですらなじみのない世界であり、作業負荷はいやがおうにも高まってしまう。
開発環境については、WebObject 4.0 には 3 つのものが標準添付されている。
WebScript: よくわからない……。
Objective-C: gcc 2.7.2 ベースで、gcc や g++ も添付されている。
Java: ふつうの Java のようだ。
Yellow Box (BSD 4.4 互換環境) の look-and-feel は OPENSTEP のそれである。 BSD 4.4 であるから、たいていの UNIX 用アプリケーションは少々の修正だけで動作するはずだ。UNIX の標準 WWW サーバと言ってよい Apache については、version 1.3.3 が添付されている。
開発環境標準添付、WebObject 50 トランザクション/分 ライセンス付き、 OS 自身はアカウント/接続無制限、で¥128,000- であるから、 WindowsNT Server に比べるとかなり割安感がある。 マイナーな地位に甘んじてきた WebObject だが、MacOS X Server の登場でメジャーとなるかもしれない。
NetBoot 画面の iMac |
NetBoot においては、セレクタやコントロールパネルの表示/非表示について、 ユーザが所属するグループ毎に設定できるようになっている。 また、OS を含む全てのファイルがネットワーク経由でやりとりされることになる。 これにより、 NT における「ユーザプロファイルのコピーにかかわる不具合」のような事態は存在しなくて済むが、一方でネットワークには大きな負荷がかかることになる。
現実問題として、演習室のような用途 (一斉使用) での client 数は 50 程度が限度だろう。 現に Apple の NetBoot デモ (client 数 50) は、 米国では成功したが日本では失敗している。 複数サーバへの動的ロードバランスも困難ということであった。
NetBoot できるのは iMac と新 G3 Mac だけである。 よって、NetBoot 環境は新規導入物件でしか実現できない。
ヤノ FireWire ハードディスク 右側に見えるのは FireWire ケーブル |
新 G3 Mac に標準塔載され、 最近ライセンス問題でも話題となった FireWire (IEEE1394, ソニー名称 i.Link) だが、ようやく対応製品が登場してきた。ヤノ電器は FireWire 対応のハードディスクおよび MO ディスクを展示。 もちろん plug-and-play が可能で、 速度的にも UltraSCSI に匹敵する性能が出ているとの説明。 3 月には発売したいということであった。 気になる価格だが、4GB で 6 万円程度で出したい、だそうだ。
その他、ヤノの説明において、私が FireWire に抱いていたイメージとは若干異なる事実が存在したので記しておく。
MacOS 標準の FireWire 機能拡張だけでは動作しない。
接続する機器毎に個別の機能拡張を用意しないといけないのだそうだ。 ヤノ電器も、独自開発の機能拡張を使用して動作させていた。 また、OS 標準のフォーマッタも使えないため、これまた独自のフォーマッタが添付されるそうだ。
ヤノブースにあった FireWire HUB (ヤノの製品というわけではない) |
そのままではデイジーチェーンは無理。
FireWire ケーブルには電源も含まれるため、お題目としては FireWire だけで機器が接続できる。 しかし実際には、複数の機器を接続すると電圧が不安定となってしまうため無理だそうだ。 ヤノ電器ブースでも、G3 Mac と直接接続するのではなく FireWire ハブを経由して接続していた。ハブ経由であれば問題ないそうだ。 なお、ヤノの FireWire HDD/MO については、上記観点から電源用 AC アダプタも添付されている。plug-and-play への道は険しい。
なお、ヤノ FireWire HDD/MO に関し、 MacOS X Server 対応について質問したところ、 「MacOS X Server については不明。 MacOS X については出荷時に必ず対応させる」との返事をいただいた。
USB 機器: 前列左端はフォーカルポイントのハードディスク iDisk。 前列中央の青い匡体は ZIP ドライブ。 後列左端はヤノ電器の PCMCIA カードリーダ UPCRW-01、後列右側は USB ハブ。 アップルブースにて。 |
USB についてはそこらじゅうで対応製品を目にした。完全に定着したとみて問題ないだろう。MACWORLD 会場内では、フロッピーや ZIP はもちろん、MO、ハードディスク、PCMCIA カード、コンパクトフラッシュカードなどが USB と接続されていた。
ただし、USB は転送速度が最高でも 12Mbps (1.5MB/s) と低いため、 ハードディスクなど高速な機器を接続するには向かない。 安価な SCSI カードも多いので、ハードディスクや MO などは SCSI カードを増設したうえで SCSI 接続したほうがよいと思う。 もちろん、SCSI カードを増設しようのない iMac では話は別だが。
Mac と MS Windows 9x/NT との相互接続ソフトは 3 種類あった。
DAVE (ウィニングラン)
DAVE は MacOS にインストールし、MacOS と Windows 9x/NT との間でファイル/プリンタ共有を実現するソフトウェア。最新版は 2.1。 シングルライセンス ¥22,800-。WindowsNT 4.0 SP4 対応は不明。
PC MACLAN (DIT)
PC MACLAN は Windows 9x/NT にインストールし、 MacOS と Windows 9x/NT との間でファイル/プリンタ共有を実現するソフトウェア。 Windows 9x 用と NT 用は別パッケージ。 最新版は 7、価格は ¥36,000-、 NT 用は ¥45,000-。 SP4 対応 patch が存在。
WIN MOUNTER (ヤノ電器)
WIN MOUNTER は MacOS にインストールし、MacOS から Windows ファイルサーバの読み書きを実現するソフトウェア。 DAVE および PC MACLAN が Mac ←→ Windows 双方向の接続を実現するのに比べ、 WIN MOUNTER は一方向でしかない。また、プリンタシェアの機能はない。 しかし価格が ¥6,800- と安いのは魅力。 SP4 対応は不明。
最初の 2 つは以前にもあったもの、最後の 1 つは最近登場したものだ。 最後の WIN MOUNTER は、将来的には Windws から MacOS のファイルの読み書きもできるようにしたいとのことなので、価格が安いこともあって将来が楽しみである。
アルプス電気の MD-5000、 2400dpi という驚異の解像度は伊達ではない。印字サンプルは驚くほど美しい。 ただし印刷速度はとても遅い。 ブースでは iMac にあわせた 5 色スケルトンモデルを展示していた。
Acrobat/PDF については、 Adobe & Too パブリッシングソリューション 99 で情報が得られそうだが、開催日が 4 月 8, 9 日では参加できそうにない。
おまけ (画像がたくさんあるので、 ご覧になる場合はそれなりに重いことを覚悟しておいてください)